小論文でAI(人工知能)を語るのはやめたほうがいい

アルファ碁小論文

こんにちは、慶應SFCのやまちゃんです。

 

今日は大学入試小論文の試験でAIを語るのはやめたほうがいいよという話です。

 

理由は以下の通りです。

「多くの受験生はAIへの理解が浅く、AIの話から意味のある結論を導けないから」

 

AIのことをよく知らず、技術の経験があるわけでもないのにAIを語ると失敗します。

 

実際、「AIで人類は労働から解放されて暇になるから余暇が重要になる」などの意見がよくあります。

しかしこれは的外れな予測です。

 

人類の歴史を古代文明から遡ると、まず古代ギリシャなど一部の市民が大多数の奴隷を支配する時代がありました。

市民は政治や哲学など知的な活動に従事し、奴隷は農業や家事などの肉体労働を担当しました。

 

このような身分制度は中世くらいになると少し多様性が出てきますが、近代まで残ります。

アメリカが奴隷を解放したのも世界史の中では比較的最近の出来事です。

 

近代になると国や地域によっては形式上の身分差別はなくなりました。

現代の日本では天皇家や宗教家など一部の例外を除けば多くの人が資本主義社会で働いています。

 

日本のような民主主義と資本主義の国では多くの人が知的労働か肉体労働に従事しているわけです。

 

では、AIが普及したら人々は労働から解放されるのでしょうか?

答えはNOです。

 

古代ギリシャの身分制度を思い出してみると、市民の豊かな生活は奴隷が支えていました。

AIで人を労働から解放するということは、AIやロボットに奴隷の代わりをさせるということです。

 

現在、掃除ロボットのルンバなど家事を自動化する機械は普及しつつあります。

だから、家事の負担が減ることはあるでしょう。

 

しかし、仕事そのものがなくなるというのは甘い考えです。

 

イギリスで産業革命が起きたとき、職人仕事の機械化による失業を恐れた人たちがいました。

彼らは、工場の襲撃と機械の打ち壊しというラッダイト運動を起こしましたが政府に鎮圧されます。

 

産業革命時代のイギリスの経済学者カール・マルクスは資本論でこのラッダイトを批判しており、労働者は「物質的な生産手段」ではなく、「社会的な搾取形態」を攻撃すべきだとしたそうです。

 

マルクスの理論は現代では否定されている面も多いですが、この指摘に限ってみれば参考になります。

 

具体的に説明しましょう。

 

まず工場の機械は物質的な生産手段です。

しかし労働者が職を失うのは機械のせいではないということです。

 

マルクスは「そんな単純な話じゃないぞ」と言いたいわけです。

 

ではマルクスは何が言いたかったかというと、経営者は元々労働者が生産した価値の一部を自分のものとして奪っているということです。

 

(ちょっと過激な考え方ですが、一応言っておくと私はマルクスの信者ではありません。)

 

つまり、経営者は従業員を楽にするために機械化を進めているのではなく、自分が儲けるために機械化を進めているのです。

だから、機械を壊しても新しい機械が導入されるだけで貧困を生み出す構造自体は変わらないと言っているのです。

 

だからAIで人々は労働から解放されるのではなく、逆に新しい仕事に縛り付けられるのです。

 

資本主義社会で機械化というのは、生産の効率化のために行われます。

 

生産の効率化は労働者の人件費削減を同時に起こすことが多く、労働者にとって良いこととは限らないのです。

 

例えば、調理や接客を全てロボットが担当するレストランに行きたいと思う人はどれくらいいるでしょうか。

ロボットレストランは既に中国の一部では稼働し、日本でも少しずつ出てきています。

 

ロボットレストランは従業員が要らないのであまり雇用を増やしません。

これと同じようなことが知的労働でも起きると人々は職を失います。

 

現に、銀行や保険会社、メーカーなどの企業では不要な人材の整理が始まっています。

 

このトレンドが続くとどうなるかというと、AIやロボットで代替される仕事をしていた人は失業します。

 

その結果、雇われる側の労働者より雇う側の経営者が有利になります。

なぜなら、労働力も代替可能になると競争原理がはたらいて価格が下落するからです。

 

その結果起きることは労働者の貧困化です。

 

実際、銀行や保険会社の事務職だった人が事実上のリストラに遭い、子会社に移ったりしています。

銀行や保険会社でも営業職はまだAIやロボットで代替できないため、事務職から営業職に移される人もいます。

 

しかし、何十年も事務をやってきた人が関係の薄い子会社に移ったり営業をやったりしても成果を出すのは困難です。

 

ずっと高い給料がもらえることを前提に家族を養う計画を立てていた人が突然生活水準を維持できなくなるのが今の世の中です。

 

もちろん、一時的に失業者が増えても新しい産業・新しい職が生まれ失業者は吸収されるでしょう。

しかし、だからといって人類が労働から解放されるわけではないのです。

 

このような実態を知らず、「AIで人類は労働から解放されて暇になるから余暇が重要になる」と小論文に書いたら採点者はどう思うでしょうか。

 

もしその答案がいい意味で未来志向であり、よほど面白ければいい点数をもらえるかもしれません。

しかし、大半の答案は非常に現実味がない希望的観測を並べたものです。

 

だから、自分がAIに詳しくない限り小論文でAI(人工知能)を語るのはやめたほうがいいと思います。

 

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