慶應SFCの理系で物理は学べるのか

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こんにちは。Yです。

今回は、SFCの理系で物理や化学を極めようとするとどうなるのかという記事です。

また、SFCの理系では何が学べるのかについても触れてみます。

SFCで物理を極めるのは難しいかもしれない

以前、以下のすてふさんの記事を読みました。

「慶應SFCから物理を独学して北海道大学理学部物理学科に3年次編入学した話」

慶應SFCから物理を独学して北海道大学理学部物理学科に3年次編入学した話|すてふ|note
想定している読者 ・北海道大学理学部物理学科への編入学を考えられている方 ・理系学部1,2年範囲の数学・物理学を独学されたい方 ・慶應SFCを目指す理系の高校生 ベースは編入合格体験記ですが、これまでに勉強した教科書や理系出身の自分にとってSFCがどういう場所だったかも書き残します。全てに目を通すような物好きは...

この記事を読んで、「なるほどなあ」と思いました。

私自身は物理学専攻ではないのですが、共感する部分が多かったのです。

どこに共感したかというと、SFCの理系は理工学部とは異なるという点です。

環境情報学部と理工学部の違い

同じ慶應でも、理工学部では一般入試で英語と数学と物理・化学が課されます。

そのため、理工学部の授業はある程度数学、物理、化学の基礎力があることを前提にしています。

一方、SFCの一般入試の科目には物理と化学がありません。

そのため、SFCの授業は物理や化学の発展的なことは扱わないことが多いです。

SFCでは、物理や化学を学びたかったら理工学部の授業を取れという雰囲気があります。

または、独学です。

自分で他学部の授業を取ったり独学したりと、比較的自由に学べるのがSFCのいいところです。

しかし、その反面、物理や化学を専門的に学びたい人は苦労することになります。

研究会について

さらに、仮に基礎的なことを独学できたとしても、自分がやりたい研究ができるとは限りません。

SFCでは、せっかく研究するなら研究会に入ろうということになります。

研究会というのは、他大学でいうところの研究室みたいなものです。

この研究会は色んな分野のものがあるのですが、それぞれの研究会を担当している教員の専門を主にやっています。

そのため、自分がやりたい研究に対して、それを指導できる教員がいないことがあります。

SFCでは、学生が自分の研究分野とは異なる専門の教員に指導を受けることもあるのです。

そうすると、学生は結構悩みます。

実は、研究会難民のSFC生は結構いると思います。

自分から行動を起こさない限り、なかなか情報も手に入らないため、大変なのです。

そう考えると、物理や化学を専門的に学びたい人はSFC以外の選択肢も考えた方がいいと思います。

「SFCに入っても理工学部の授業も取れるんでしょ?」と思われるかもしれません。

それはそうなのですが、進級・卒業のためにはSFCの授業の単位を一定数取る必要があります。

理工学部の授業ばかり取っていると、SFCで進級・卒業するのが難しくなるかもしれません。

また、普通の講義形式の授業は理工学部のものも取れますが、研究室に参加できるかは分かりません。

なんにせよ、SFCで進級・卒業するためには、SFCのどこかの研究会に所属して卒業プロジェクト(卒論など)をやる必要があります。

いま進路を考えている高校生や受験生は、そのあたりの事情をよく考えてみてほしいと思います。

SFCの理系では何が学べるのか

ついでに、SFCの理系で何が学べるかを書いておきます。

SFCの公式サイトを見ると、研究領域として以下の表が貼ってあります。

画像の出典 : SFC公式サイト https://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/research_fields/

しかし、一目見ただけではよくわからないと思うので、解説します。

(1)先端情報システムの分野

コンピューターの研究をやっています。

コンピューターとコンピューターをつなぐのはネットワークですね。

そのネットワークとネットワークをつなぐのはインターネットです。

そういう、通信とかITと言われるものをやっています。

特に、SFCには「日本のインターネットの父」と言われる村井純さんがいたので、ネットワークには強いと思います。

また、分野の名前を「コンピューターサイエンス」と書かずに「先端情報システム」と書いているのにも理由があるでしょう。

ただのパソコンいじりではなくて、人々の生活を豊かにするために情報学を研究しているんだということかもしれません。

(2)エクス・デザインの分野

主にコンピューターを使ったデザインだと思ってください。

パソコンで画像や映像、プログラムなんかを作るイメージです。

また、3Dプリンターなどを使って実際にリアルのモノを作ることもあります。

ちなみに、エクスというのは、アルファベットのXのことです。

このXに色々な意味を込めて、SFCではエクス・デザインと言っています。

エクス・デザイン (XD)|慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
未知なる領域(X)をデザイン・研究する チェアパーソン 藤井 進也 准教授 XDプログラムは、デザインを軸としつつ、アート、サイエンス、テクノロジーを自在に駆使する「クリエイティヴマインド」を研究の推進力・原動力としています。芸術と科学、...

(3)先端生命科学の分野

一言でいうと、生物学です。

人間や、人間以外の生き物について研究しています。

特に、人間の細胞の中みたいな、顕微鏡レベルの小さいものを見ている感じです。

DNAとかタンパク質とか、そういう言葉がよく出てきます。

あとは、システム生物学ですね。

生物の体というのは不思議なもので、一つ一つの臓器がつながって、きちんと協調しています。

そのような、部分と全体をつなぐものは何なのかというテーマです。

また、生態学みたいな研究もあります。

生物学と言わずに生命科学と言っているのは、医学的な要素も含まれるからでしょうか。

SFCでは医師免許は取れませんが、医学部っぽい研究もできそうです。

(4)環境デザインの分野

ここは色んな分野が混ざっています。

建築、都市開発、防災、地球環境問題など。

みんなが快適で住みやすい環境を作りましょうっていうことですね。

もう少し言うと、人間と自然の共存みたいな。

この中で、意外性があって面白そうなのは建築でしょうか。

あとは、防災や環境問題の方面には地学的な要素もあります。

天気(気象)とか。

(5)人間環境科学の分野

主に、認知科学、心理学、スポーツ科学だと思ってください。

あとは、情報化社会のあり方を考える、とかですかね。

認知科学は、人間がこの世界をどう捉えているかを研究する学問です。

人間の五感と、それを脳や神経がどう処理するかの研究ですね。

進化心理学も、この認知科学に近いところがあります。

進化心理学は、どちらかというと(3)の先端生命科学の分野に入りそうな気もしますが。

心理学全般で言うと、慶應の文学部でも心理学は学べます。

SFCの心理は、精神医学に近いところもある印象です。

SFCの理系で学ぶのが難しい分野

では、SFCの理系で学ぶのが難しい分野は何でしょうか。

それは、3つのパターンがあると思います。

① 独学を強いられる

② 研究に必要な機材などがキャンパスにない

③ その他

① 独学を強いられる分野

まず、①の独学を強いられる分野。

これは、先述の物理や化学ですね。

数学の教員はいるのですが、物理や化学の教員は多くはないと思います。

あとは、土木、電気工学、機械工学、航空宇宙工学、海洋工学。

このあたりを学ぶのは大変そうです。

というか、避けた方がいいんじゃないかなと思います。

② 研究に必要な機材などがキャンパスにない分野

次に、②の研究に必要な機材などがキャンパスにない分野。

これは、物理や化学とも被るのですが、広大な実験施設を要するものがそうです。

例えば、旧帝大だと演習に使える森林があったり、附属の研究施設が数多くあったりします。

例えば、東大の地震研究所や物理系の研究所は有名ですよね。

SFCには、旧帝大ほどの立派な研究施設は少ないです。

SFCで一番いいのは、生命科学分野の鶴岡タウンキャンパスですね。

これは、山形県鶴岡市にある、長期滞在もできる研究施設です。

慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス
慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス

鶴岡はすごいです。

しかし、鶴岡以外だとあまり大きな研究施設はありません。

そういった旧帝大とSFCの格差は、歴史的な背景と、研究力、そして国から貰える補助金の額によって決まっていると思います。

これを踏まえると、「お金がかかる研究をやりたかったら旧帝大か東工大に行け」ということになりそうです。

③ その他

その他、SFCで学ぶのが難しい分野として、資格に紐づいた分野があります。

医学、薬学、獣医学などですね。

このあたりは資格を取れる学部に行くべきです。

番外編 教員免許について

これまでは学びたい分野の話をしてきました。

ちょっと脱線しますが、ついでに教員免許についても触れておきます。

教員免許を取りたい人は、教員免許が取れる学部に行ってください。

SFCの理系だと、教職課程に参加することで高校の「情報」の教員免許が取れます。

画像の出典 : SFC公式サイト https://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/curriculum/path.html

逆に言うと、SFCでは情報以外の免許は取れません。

つまり、SFCの授業だけでは、数学や理科の教員免許を取れないということです。

一応、注に「※他学部に設置されている科目についても取得できる場合があります。」とありますね。

しかし、私の周りでは他学部の教員免許を取っている人はほとんどいなかったです。

SFCの理系で情報以外の教員免許を取ろうとすると面倒なことになりそうなので、やめた方がいいと思います。

というか、数学、理科の教員免許を取りたかったら理工学部に行きましょう。

まとめ

まとめです。

進路はよく考えましょう。

SFCには、北海道大学、九州大学あたりの大学に受かって、どちらに進学するか迷ったという人もいました。

受かってから悩むのもいいですが、できれば早めに情報収集しておくといいのかなと思います。

というか、SFCは滑り止めとして受けるには特殊な気もするんですよね。

まあ、人間万事塞翁が馬ですかね。

滑り止めで入学しても楽しんでいる人はいるので、そこは性格によるのかなと思います。

SFCが第一志望の人も、よく考えてみてください。

高校生のうちは研究費のことなどはあまり考えないかもしれませんが、大学生、大学院生になるとお金のことも気になってきます。

「研究資金がないから自分で起業して資金調達する」みたいなのも悪くはないですが、それは最後の手段として考えるべきです。

まずは、自分が何をやりたいのか自己分析(内省)をしてください。

そのうえで、本当にSFCでその研究ができるのか(指導教員、施設、研究費)を考えましょう。

もしそのあたりに問題がなければ、SFCで楽しく学べる可能性は高いです!

追記 2022/10/9

今日、この記事を読み返しました。

読んでみて、一部、自分でも何が言いたかったのかわからなかったです。

この記事を書いたときの私の心境を思い出してみると、私は環境情報学部に変化してほしいんだと思います。

今の環境情報学部には長所と短所があります。

長所は残しつつ、短所を改善したい。

そういう気持ちでこの記事を書きました。

具体的には、入試科目に物理と化学を課してほしいということです。

物理と化学ができないのでは、結局文系学部になってしまいます。

生物は大学に入ってから勉強してもなんとかなるかもしれません。

しかし、物理と化学は大学に入ってから学び直せるほど軽い科目ではありません。

もし宇宙開発とかやりたいとなったら、どうするんでしょうか。

文系だったら総合政策学部だけでいいはずです。

環境情報学部を、総合政策学部とは違う学部としてやるなら、理系にしてほしいです。

そうすると、そもそもなんでSFCは学部が2つに分かれてるのかっていう話になりますね。

一部の関係者は、昔の話を持ち出して「文科省が文系と理系を分けてほしいと言ったから分けた」と言います。

しかし、そんな昔の話を持ち出して、しかも人のせいにしてるのもなんだかなあと思います。

過去じゃなくて未来を向くのがSFCじゃないの?って思うわけです。

私は受験生のときから、環境情報学部は何をやっているのかよくわからない感じがしました。

それは、総合政策学部と比較しても、そうです。

おそらく、わざとフワッとした感じにして、色んな分野で新しい研究ができるようにしてるんだと思いますけどね。

ただ、それだとSFCの独自性はどこに行くんだろう?って感じです。

今のSFCは、他大学や他学部と分野で差別化しているというよりは、SFCの歴史や伝統という文化の面で差別化している気がします。

そうすると、学べる内容はIT・ソフトウェアということになります。

私としては、宇宙開発みたいなスケールの大きいことをやってほしいんですけどね。

それこそZero to Oneみたいな。

イーロン・マスクのSpace Xみたいなことをやる人が出てきてほしいんですよ。

村井さん(インターネットの父、村井純)は「環境情報学部は人と地球のことをやる。それ以外のことは全部総合政策学部がやってくれる。」と笑いながら仰ってましたね。

私はその言葉がとても好きなんです。

でも、私は地球を客観視するためにも宇宙に出ていきたい。

SFCも設立されてから30年が経って、良くも悪くもブランド化しています。

それをもう一度、破壊的創造みたいな感じで再構築してほしいです。

世界史でいうと大航海時代みたいな、そういう時代を自分たちで作っていってほしい。

今の世の中なら、宇宙大航海時代ですよね。

そういう気概が必要なんじゃねえの?って老害の私としては思うわけです。

もちろん、後輩たちにそれをお願いするのではなくて、私がまずやりたい。

私も頑張ります。

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